方程式x^n=1の解は半径1の円上に存在する

またどうでもいい数学の話が始まった。なぜかチャリ乗ってるときにこういうことって思いつくんだけど僕だけか?
高次方程式ではxn=1という形の方程式が一番簡単。実数解はx=1かx=-1しかないんですから。実数解を強調した理由は、もちろん実数じゃない解が存在するからです。いわゆる虚数解というものですね。ここでは実数解、虚数解まとめて複素数解と呼ぶことにしましょう。
最も簡単なのはx2=1。この式はx2-1=0と変形でき、さらに(x+1)(x-1)=0と変形できるので解はx=1,-1ということになります。
じゃあ、x3=1は?同じように変形すれば、x2-1=0→(x-1)(x2+x+1)=0となり、x=1であることが一目で分かります。じゃあ右側の式は?
因数分解ができないので解の公式を用いますが、b2-4ac=12-4×1×1=-3で混合の中身が負になってしまうので、この解は虚数解と言うことになります。即ち、x=1,(-1±√3i)/2が解になります。
実数解の方はとっても単純な答えなのに、虚数解の方はやたら複雑ですね。何故でしょう?
じゃあx4=1もやってみましょう。これは(x2+1)(x2-1)=0→(x2+1)(x+1)(x-1)=0。右側からx=1,-1であることがわかります。では左側は?二乗してマイナスになる数はiだけなのでx=i,-iです。即ちこの方程式はx=1,i,-1,-iが解であることが分かります。あれれ?三次式の時より答えが楽ですね。なんででしょう。
実は、複素平面ガウス平面)を考えることでこのことはよくわかるようになります。複素平面とは、複素数a+biが与えられたとき、直交座標上で(a,b)となるように定めた平面のことで、いわゆるx軸が実軸、いわゆるy軸が虚軸になっている座標平面のことです。すなわち複素数は数直線上の一点ではなく、座標平面上の一点であるということが昔の人によって決められたわけです。
さて、ではその座標平面上にx3=1の解を点で表してみましょう。
(-1+√3i)/2は実部と虚部に分けると-1/2+√3i/2となり、直行座標では(-1/2,√3/2)という点になります。同様に負の解もこのように変形し、複素平面上に点を打ってみるとこうなります。

どうです?正三角形が見えませんか?
この正三角形の線は後から付け足したんですが、なんで三つの点を結ぶと正三角形に見えるんでしょうか……。
ところでさっきの虚数解の方の座標、ちょっと見覚えのある形じゃないですか?(-1/2,√3/2)なんですが、コレよくよく考えたら(cos120°,sin120°)になりません?
これは実は先ほどの虚数解の一つ、x=(-1+√3i)/2はx=cos120°+sin120°iという形に変形できることを意味しています。同じ要領で、もう一つの虚数解はx=cos240°+sin240°iという形に変形できます。
120度は360度、つまり一回転を三等分した角度ですね。240度はその二倍ですから、x3=1の複素数解が表す点は半径1の円の円周をちょうど三等分する箇所に存在するのです。同じ半径で同じ角度の扇形の弧の長さは等しいので、対応する弦の長さも等しい。つまり、この三点を結んだ直線はすべて同じ長さなんです。三辺がすべて同じ長さの図形といえば?そう、正三角形ですね。
さて、この三つの解はx3=1の解な訳ですから、当然この数を三乗したら1になるはずですよね?1は複素平面上では(1,0)の点ですね。あの二つの点を1にもってくるにはどうしたらいいんでしょうか……。
ここで、虚数解の二つの点は半径1の円周上にあるわけですから、円周上を回ればいいんじゃね?と考えます。要するに原点を中心とした回転移動です。直交座標の場合は行列を用いて回転移動を表現しますが、実は回転移動を示す一次変換の行列は二乗したり三乗したりすると、回転する角度が二倍になったり三倍になったりします。その仕組みについてはここでは省略しますが、実は同じコトが複素平面上でも言えて、中心からの距離が1である複素数(a2+b2=1である複素数a+bi)はn乗するとx軸となす角θをn倍した地点に移動するのです。
まとめると複素数zがz=cosθ+sinθiで表せるとき、zr=cosrθ+sinrθiというワケなんです。
この式を使えば、x=cos120°+sin120°iで表せるx3=1の虚数解の一つは三乗すれば、x3=cos(120°×3)+sin(120°×3)i=cos360°+sin360°i=1+0i=1ということがわかりますね。
x4=1がなぜあんな単純な形になったかといえば、角度を四倍して360°の倍数になるような所に点を打つわけですから、結局は360÷4の倍数角上に点在するわけですね。360÷4=90、sin90°=1でcos90°=0なのであんな単純な形になったんですね。
この考え方を使うと、x5=1という高次方程式は簡単には解けないことが分かります。360÷5=72でsin72°やcos72°の値は簡単な数式では表せないためコンピュータによる数値計算三角関数表が必要になってきます。つまり、人間の手計算で複素数解を求めることができる最も簡単な高次方程式はx2=1,x3=1,x4=1,x6=1,x8=1,x12=1,x24=1ぐらいしかないのです。意外と少ないんですねー。


っていうどうでもいい話でした